リンパ脈管筋腫症(LAM,lymphangioleiomyomatosis)に対するラパリムスの臨床研究リンパ脈管筋腫症(LAM)に対するシロリムスの臨床研究

研究論文・データ資料

Efficacy and Safety of Long-term Sirolimus Therapy for Asian Patients with Lymphangioleiomyomatosis

アジア人リンパ脈管筋腫症患者に対するシロリムス長期投与の効果と安全性

1.はじめに

 リンパ脈管筋腫症(LAM)は妊娠可能年齢の女性が罹患し、徐々に呼吸機能障害が進行する難病です。LAMは、mTOR蛋白が無制限に働きLAM細胞が増殖を続けることで発症します。シロリムスはmTORの働きを抑制することから、LAMに対する効果が期待され様々な試験が行われてきました。米国と日本が共同で行ったMILES試験により、シロリムスはLAMの呼吸機能の増悪を防ぐことが確認されました(NEnglJMed 2011)。しかし、MILES試験では中等症以上の症例だけを対象とし、薬剤は一年間のみの内服でした。また、本試験に参加し実際にシロリムスを内服した日本人は13例でした。日本人は欧米人に比べ薬剤性肺障害を発症しやすく、LAMではシロリムスを数年に渡って内服することから、13例が一年間内服しただけでは、薬剤の安全性に不安が残ります。そこで、本邦のLAM症例に対するシロリムスの安全性と二年間の効果を調べるため、医師主導治験『LAMに対するシロリムス投与の安全性に関する多施設共同治験(MLSTS治験)』が実施されました。

2.対象と方法

 18歳以上の女性で、すでにLAMと診断されている症例を対象にしました。シロリムスは1日2錠(2mg)で開始し、血中最低濃度が一定になるように内服量を調整しました。2年間の間に11回来院し、シロリムスの安全性と効果を調べます。シロリムスの安全性は、治療中の有害事象(入院を要するものと、そうでないもの)の回数で判断します。またシロリムスの効果は、呼吸機能検査と生活の質(QOL)スコアで判断しました。

3.結果
1)シロリムスの安全性

 71名の方から治験参加の同意をいただき、実際には63名のLAM患者さんがシロリムスの内服を開始しました。63名のうち52名は、80%以上の服薬率で2年間の試験をやりとげました(図1)。

【図1】 試験参加症例数の変化

シロリムスの安全性に関しては、2年間で1549件の有害事象、27件の重篤(=入院を要する)有害事象がみられました。有害事象(重篤有害事象)の頻度は、半期ごとに611(14)、369(9)、324(1)および229(3)件と減少していき、服薬期間が延びるにつれ安全性が増していくように思われました。入院を要しない有害事象としては、口内炎、上気道炎(かぜ)、ニキビ用皮疹などが多くみられました。心配されたシロリムスによる薬剤性肺障害は3例みられましたが、いずれもシロリムス内服の中止と必要に応じてステロイド薬を使用したことにより改善しました。治験前に予想していなかった変化として、体重減少と血圧上昇があげられます。63人中33人で体重が減り、また24ヶ月で収縮期血圧が平均9.6mmHg、拡張期血圧が5.9mmHg上昇しました。このうち5人は高血圧症と診断され、降圧剤の内服を開始しました。

2)シロリムスの効果

 63名のうち7名は、さまざまな理由で呼吸機能検査を実施しませんでした。呼吸機能検査を行なった56名を対象に2年間の呼吸機能の推移を解析すると、一秒量(FEV1)と努力性肺活量(FVC)ともに2年間低下がみられませんでした(図2)。

【図2】全症例の一秒量の変化

そこで、FEV1の改善にかかわる臨床的特徴を調べたところ、乳び胸(全9名、うち過去に診断された方7名、登録時に胸水が存在した方2名)との有意な関連が見出されました。そこで乳び胸の9名とそれ以外の47名の呼吸機能を比較したところ、乳び胸の方のFEV1とFVCはそれ以外の47名に比べ明らかにに増加していました(図3)。

【図3】乳び胸の有無による一秒量変化の差

一方、乳び胸のない47名のみを対象として、2年間のFEV1とFVCの変化を解析すると、FEV1のみ有意な低下がみられました。この47名を、シロリムス内服前の“(性別、身長、年齢を一致させた健常者を100としたときの)予測値に対するFEV1(%FEV1)”で分けてみました。そうすると、%FEV1が70%以下の方は28名、70%より大きい(=正常)の方は19名いました。この2つのグループで呼吸機能の変化を解析すると、前者は2年間で明らかに低下しているのに対し、後者では低下がみられませんでした(図4)。

【図4】重症例別に分けた一秒量の変化

4.結論

以上の結果から、
①シロリムスは乳び胸をともなうLAM患者の呼吸機能を改善すること
②乳び胸のない患者ではシロリムスを内服していても呼吸機能は低下すること
③シロリムス内服により軽症例のLAMの呼吸機能は安定すること
が示されました。

研究論文・データ資料

ラパリムス錠を処方された患者さん、ご家族の方へ

「ラパリムス」はノーベルファーマ社から発売されている治療薬です。以下よりノーベルファーマ社のサイトへリンクします。

シロリムスは別名「ラパマイシン」ともいいます。
このサイトでは一般名の「シロリムス」と、治療剤名の「ラパリムス」の表記を使用しています。