リンパ脈管筋腫症(LAM,lymphangioleiomyomatosis)に対するラパリムスの臨床研究リンパ脈管筋腫症(LAM)に対するシロリムスの臨床研究

研究論文・データ資料

リンパ脈管筋腫症患者に対するシロリムス投与による口内炎発症のリスクファクター

1.はじめに

 リンパ脈管筋腫症(LAM)は、平滑筋細胞が増殖し続けることによって引き起こされる稀な肺疾患であり、主として妊娠可能な年齢の女性に罹患します。現在LAMの治療薬として、シロリムスが第一選択肢となっています。シロリムスにより高頻度にみられる有害事象の一つに口内炎があります。そこでシロリムスによる口内炎発生の要因を特定するために、医師主導治験『LAMに対するシロリムス投与の安全性に関する多施設共同治験(MLSTS治験)』のデータを用いて、口内炎と患者背景に関する要因との関連性を調査しました。

2.対象と方法

 対象は18歳以上の女性で、すでにLAMと診断されている63症例としました。シロリムスは1日2mgから開始し、血中濃度の最低値が5〜15ng/mLに維持されるように調整しつつ2年間に渡り投与しました。その間、有害事象の発生状況について調査し、発症時期、発症回数、重症度ならびに発症期間を記録しました。それらのデータと、様々な観察調査項目に関するシロリムス服薬開始前の時点における値ならびに投与後の変化量との関係について解析しました。

3.結果
1)口内炎の発症率

 最も高頻度にみられた有害事象は口内炎でした。一人当たりの口内炎発生回数は、投与後1年目で2.9回、2年目では1.7回でした(図1A)。口内炎が少なくとも1回発症した症例の割合(累積の発症率)は、投与後9か月で88.9%(63名中56名)に達し、ほとんどの症例で口内炎が発症したことが明らかとなりました(図1B)。

投与期間中における口内炎の発症回数の分布は、発生回数の中央値が2回で、65%(63名中41名)の症例において2回から20回の口内炎が発生しました(図1C)。口内炎の罹患期間の分布は、罹患期間の中央値が165日で、76%(63名中48名)の症例で23日から598日の罹患日数となっていました(図1D)。口内炎の重症度はほとんどが軽症でしたが、口内炎を発症した56名中11名は、口内炎による薬剤の減量(8名)もしくは休薬(6名)を行っておりました。口内炎による中止例はありませんでしたが、今回の口内炎発生率は、従来の報告と較べて高い結果となっておりました。

2)口内炎発生に関連している背景要因

 口内炎の発生回数により、症例を4群(グループ1:口内炎発生なし;7名、グループ2:発生回数1回;15名、グループ3:発生回数2回;11名、グループ4:発生回数3回以上;30名)に分け、群間において種々の要因を比較したところ、白血球数、赤血球数、ヘモグロビン値(血色素量)、ヘマトクリット値が群間で有意に異なっていました。特に赤血球数、ヘモグロビン値、ヘマトクリット値は、グループ1が最も高く、グループ4が最も低い値となっていました。一方、シロリムスの血中濃度、服薬率、総服薬量ならびにFEV1(1秒量)とFVC(努力肺活量)の変化量は、いずれも群間での差はみられませんでした。
さらに服薬開始前のヘモグロビン値の高低により、低ヘモグロビン群(14.5g/dl未満;30名)と高ヘモグロビン群(14.5g/dl以上;33名)に分けて、その2群間で口内炎の発症回数を比較したところ、低ヘモグロビン群の方が有意に口内炎の発生回数が多くなっていました(図2A)。また口内炎の発生速度を表す累積発生率曲線で比較したところ、投与後2年での累積発生率が、低ヘモグロビン群が100%、高ヘモグロビン群が81%で、低ヘモグロビン群の方が有意に高い口内炎累積発症率を示していました(図2B)。

3)平均赤血球容積(赤血球の大きさ)の減少量と口内炎の発生との関連

以前の報告により、シロリムスの投与により、赤血球の大きさや血色素の量を反映する平均赤血球容積が経時的に減少することがわかりました。一方、鉄欠乏性貧血(小球性低色素性貧血)により口内炎が発症しやすくなることが知られています。そこでシロリムス投与後3か月における平均赤血球容積の減少量が少ない群(低平均赤血球容積減少群;3fL未満、14名)と減少量が多い群(高平均赤血球容積減少群;3fL以上、46名)に分けて、その2群間で口内炎の罹患日数を比較したところ、高平均赤血球容積減少群の方が有意に口内炎の罹患日数が多くなっていました(図3A)。さらに口内炎の累積発生率曲線で比較したところ、投与後2年での累積発生率が、低平均赤血球容積減少群が73%、高平均赤血球容積減少群が95%で、高平均赤血球容積減少群の方が有意に高い口内炎累積発症率を示していました(図3B)。

4.結論

以上の結果から、シロリムス服薬開始前における元々のヘモグロビン値が低い方ほど、ヘモグロビン値が高い方に比べて服薬開始後に口内炎が発生しやすく、かつシロリムス投与後における平均赤血球容積の減少量が大きい方ほど、その減少量が小さい方に比べて口内炎が発生しやすくなることが示されました。

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ラパリムス錠を処方された患者さん、ご家族の方へ

「ラパリムス」はノーベルファーマ社から発売されている治療薬です。以下よりノーベルファーマ社のサイトへリンクします。

シロリムスは別名「ラパマイシン」ともいいます。
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