リンパ脈管筋腫症(LAM,lymphangioleiomyomatosis)に対するラパリムスの臨床研究リンパ脈管筋腫症(LAM)に対するシロリムスの臨床研究

治療薬の研究

MLSTS医師主導治験(2012年~2014年)の結果

MLSTS医師主導治験を経てシロリムスが薬事承認となりました。

新潟大学の中田 光教授、国立病院機構近畿中央胸部疾患センターの井上義一臨床研究センター長、順天堂大学の瀬山邦明先任准教授を中心とする医師主導治験グループ(全国9施設)は、若年女性に生じこれまで肺移植以外に有効な治療がなかった稀少肺疾患「肺リンパ脈管筋腫症」(略称LAM 「ラム」)に対して、分子標的薬のシロリムスが、重大な副作用なく、肺の機能の低下を防ぐことを確認しました。

この成果を受けて、厚生労働省医薬品第二部会では、2014年5月26日にシロリムスを世界初となるリンパ脈管筋腫症に対する治療薬として承認しました。
本研究は、ファイザー株式会社からの薬剤提供と厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等克服研究事業(難治性疾患実用化研究事業))により行われました。また本研究では、J-LAMの会(リンパ脈管筋腫症患者と支援者の会)と研究者との連携による勉強会の開催やホームページでの広報も重要でした。
既に実施した米国、日本、カナダによる国際共同試験(主任研究者:シンシナティ大学 フランク・マコーマック教授、MILES試験、米国 NIH 予算)の結果が承認の参考資料になりました。このような枠組みで、患者数が少ない稀少疾患の新規治療開発が成功したことは、難病新法が国会で成立した今、意義深いことと考えられます。

本治験の成果のポイント
  • 有効な治療薬がなかったリンパ脈管筋腫症に対し、世界初の有効な薬物療法が実用化された。
    なお、米国でも2015年に薬事承認が認められた。
  • 米国で行われた基礎研究の成果を我が国の医師主導治験が実用化に繋げた。
  • 厚生労働省健康局が所掌する難治性疾患等克服研究事業で初の薬事承認となった。
  • 稀少疾患でも、全国の専門医療施設と患者が連携しての新薬開発が可能なことを実証した。
  • 口内炎、皮疹などの軽度の副作用がみられたが、重大な副作用がでないことを確認した。

LAMの原因解明と新規治療薬シロリムス

近年、アメリカを中心に原因の解明が進み、その知見に基づいて治療薬の候補に上がったのが、欧米で腎移植後の拒絶予防に用いられているシロリムスでした。シロリムスは分子標的治療薬の一種で、細胞の中の mTOR(エムトール)という蛋白の働きを特異的に抑えます。

2006年から 2010年の間、米国シンシナティ大学のフランク・マッコーマック教授が中心となって米国 NIH予算と米国の患者会が運営する LAM 基金、日本では厚生労働科学研究費を原資として日米加11施設が参加して、89名の患者さんを実薬と偽薬に無作為に割り付けてシロリムスを投薬する国際共同臨床試験(MILES試験)が行われ、日本からは新潟大学と近畿中央胸部疾患センターが参加しました。その結果、シロリムスは、リンパ脈管筋腫症による肺の病気の進行を食い止めることが証明されました。

わが国でのシロリムスの医師主導治験

しかしながら、MILES試験でシロリムスを服用した日本人が13名と少なかったことから、日本人における安全性を確認する必要がありました。

全国9施設の医師は、日本人の患者50人以上を対象とする医師主導治験を厚生労働省と医薬品医療機器総合機構に提案し、2012年9月より治験(MLSTS医師主導治験)が開始されました。患者会の協力も得て、全国63名の患者さんが治験に参加してくださいました。その結果、シロリムスの12ヶ月の服薬により、肺機能の低下が抑えられることがわかりました。皮疹や口内炎などの軽症の副作用は、多く見られましたが、重い副作用はありませんでした。

MILES試験とMLSTS医師主導治験のデータを医薬品医療機器総合機構が検討し、さらに厚生労働省が審査し、今回の承認に至りました。

意義と今後の見通し

医師が計画して、患者会と国と製薬企業が協力して長い年月をかけて実用化したシロリムスですが、今後さらに多くの症例を積み重ね、より安全で有効性の高い治療法を目指します。

参考文献

1,Takada T, Mikami A, Kitamura N, Seyama K, Inoue Y, Nagai K, Suzuki M, MoriyamaH, Akasaka K, Tazawa R, Hirai T, Mishima M, Hayashida M, Hirose M, Sugimoto C,Arai T, Hattori N, Watanabe K, Tamada T, Yoshizawa H, Akazawa K, Tanaka T, Yagi K, Young LR, McCormack FX, Nakata K.
Efficacy and Safety of Long-term Sirolimus Therapy for Asian Patients with Lymphangioleiomyomatosis.
Ann Am Thorac Soc. 2016 Aug 11. [Epub ahead of print]

2. Young L, Lee HS, Inoue Y, Moss J, Singer LG, Strange C, Nakata K, Barker AF, Chapman JT, Brantly ML, Stocks JM, Brown KK, Lynch JP 3rd, Goldberg HJ, Downey GP, Swigris JJ, Taveira-DaSilva AM,Krischer JP, Trapnell BC, McCormack FX; MILES Trial Group.
Serum VEGF-D a concentration as a biomarker of lymphangioleiomyomatosis severity and treatment response: a prospective analysis of the Multicenter International Lymphangioleiomyomatosis Efficacy of Sirolimus (MILES) trial.
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3. McCormack FX, Inoue Y, Moss J, Singer LG, Strange C, Nakata K, Barker AF, Chapman JT, Brantly ML, Stocks JM,Brown KK, Lynch JP 3rd, Goldberg HJ, Young LR, Kinder BW, Downey GP, Sullivan EJ, Colby TV,McKay RT, Cohen, MM, Korbee L, Taveira-DaSilva AM, Lee HS, Krischer JP, Trapnell BC; National Institutes of Health Rare Lung Diseases Consortium; MILES Trial Group.
Efficacy and safety of sirolimus in lymphangioleiomyomatosis.
N Engl J Med. 2011 Apr 28;364(17):1595-606.

治療薬の研究

ラパリムス錠を処方された患者さん、ご家族の方へ

「ラパリムス」はノーベルファーマ社から発売されている治療薬です。以下よりノーベルファーマ社のサイトへリンクします。

シロリムスは別名「ラパマイシン」ともいいます。
このサイトでは一般名の「シロリムス」と、治療剤名の「ラパリムス」の表記を使用しています。